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2010年1月20日

『サロゲート』SFとしてはユルいがエンタメとしては良い出来。

Surrogates

 はい、みなさんこんばんわ。
 今さらですが、とうとう2010年になってしまいました。だいたいね、四半世紀前の昔は『21世紀』という言葉自体がSFの代名詞だったんですよ。まして2010年なんてそれだけで夢物語でしたよ。
 もっともね、お若い方にしてみればどうということ、ないのかもしれませんね。物心ついた時には一家に一台以上パソコンがあって、宇宙ステーションへ飛び立つ飛行士たちの話も他のニュースのついでにしか流れないし、カバンの中には携帯電話が普通に入ってるんですから。

 この映画、サロゲートは次の時代、ロボットが人間の代わりをしてるのが当たり前の時代。
 え。そういう映画、今までにもたくさんあった?そうですね、でもちょっと変わってるんですよ、この作品。いわばロボットの原点回帰とでもいいましょうか。

 
 チェコのカレル・チャペックという劇作家の1921年の作品がもとになって、ロボットという言葉とイコール人造人間という考え方が広まり、さらにSF作家アイザック・アシモフがロボットの概念を今のイメージとして決定的にしましたね。
 それから90年、ロボットって何?と尋ねるといろんなタイプの答が返ってくるようになりました。

 それだけロボットという定義の底辺が拡がったわけです。ただね、日本ではアトム以降のアニメの影響が大きくて、かなり好意的に捉えてるのに対して、欧米では人間の存在を揺るがす驚異として描かれる事が多いんですね。
 というのもチャペックの最初の作品も、アシモフの作品も基本的に人類に対して叛乱するのが必然といった流れがあって、そこから派生したロボットがらみの作品も映画も当然のこととしてパニックものなんですね。

 彼らの考え方を覆す作品が出ていても、いろんな意味で越える事がなかったんでしょうね。

 その後にロボットが登場する作品をズラッと観ても、『メトロポリス』『禁断の惑星』『地球が静止する日』『ウエスト・ワールド』新しめでも『ブレードランナー』『ターミネーター』『レッド・プラネット』『AI』『アイ、ロボット』などなど、禁断の惑星に登場するロビーくらいでしょうかね、最後まで人間に忠実だったのは。
 そうそう、『エイリアン』のアンドロイドたちもそうですね。

 一様に“優秀極まりないけど、薄気味悪いもの”として描かれている。『Wall-E』やそれの元?と思われる『ショート・サーキット』ですら、故障してるから人間寄り、という皮肉な設定。


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 さてしかし、これらのロボットはすべて今回のサロゲートに登場するロボットとは大きく違います。彼らには叛乱するだけの“自我がある”んですね。
 ところがサロゲートに登場する無数のロボットたちは、ユーザーとそっくりな姿形でこそあれ、のーみそはありません。むしろマニピュレーターというか、遠隔操作のためのヒトガタをした装置に過ぎないところがこの作品のミソ。
 日本では操縦者に完全依存した人型兵器としてのロボットはスタンダードですが、アメリカでこのスタイルはもしかしたら初めてではないんでしょうか。
『エイリアン2』や『スターシップトルーパー』に登場するものも、あくまでウェポンとかアーマーとしての認識であって、あれをロボットとは誰も呼ばなかったでしょう。

 つまり、サロゲートに出てくるの(劇中ではそのロボットをサロゲートと呼んでましたが)は、今の感覚で言えば“乗り物的”…つまりマジンガーZなど、スーパーロボットが等身大で出てきてると捉えるとピンと来るんじゃないでしょうか。

 だからこれこそ『アバター』なんですね。
 実際、“サロゲート”とは代理とか身代わりといった意味らしいです。

 で、やっと作品のお話をさせていただきますと、この時代の世界は誰も彼もがこのアバターロボットを介して実生活を送っていて、本体である人間は自宅の奥深く、リンク用装置のベッドに横たわったままでえんえんと引きこもり生活している。
 そんな生活してたら、ほんとなら骨も筋肉も衰えきって、自力で立つことさえできなくなるはずですが、そこはそれ、サプリメントとかで無理矢理維持しているような設定らしい。

 面白いのはこの作品では、引きこもり行為自体の善し悪しには全く言及してないこと。
 これが昔のSFなら、全人類が引きこもってしまったら世界はいずれ破滅する…みたいな危機感と終末論に繋がるべき所なんですよ。『マトリックス』がそうでしょう?

 人間の真の自由はどこにあるのか?みたいな。

 いちおうサロゲートでもそういうことを言うんですが、他のSF映画ほど、そこのところに重きが置かれてない。
 ここらへんは、ある意味で新鮮です。誰もが引きこもり経験ありきでしょ、というのが前提ででもあるかのよう。むしろ人と人の本来の繋がりって何?という投げかけ方。

 ちなみに『銀河鉄道999』各駅停車エピソードのひとつに『なまけものの鏡』というのがありましてね。何もかもオートメーションで快適な生活を送ってる星のひとたちが家からはみでるくらい肥満して…なんて話があったのをこの映画の設定を聞いた時、真っ先に思い出しましたけどね。
 でももともと人間がロボットに望んだことは、ぶっちゃけて言えば“奴隷”なんです。
 自分たちがやりたくない労働の肩代わりだったり、楽したいが為だったり、欲求を満たすための対象だったり、人間が危険に身を曝すことなくいろんな事に従事するための存在、それがロボットだったはず。

 だから『パーマン』で主人公ミツオとコピーロボットとの、やれ宿題やれだの、イヤだ、自分でやりなよ…とかのやりとりなどは、まさに“所持”→“服従”→“叛乱”→“崩壊”…と、古典的ロボットSFの縮図だと言えるのです。

 そして全てのそうした作品の行き着くところは、みな同じ。

 だから、私みたいに先を全く読まない、ボーッとした観客でさえも、この『サロゲート』は諸処ミエミエなんですが、めずらしくブルース・ウィリスが結構厚みのあるまともな演技をしていまして、さらに90分にも満たない尺の中に無理に詰め込みすぎず、科学的設定などはかなりあっさりした映画でありながら、ブレードランナーを彷彿とさせる派手で重厚なアクションシーンもほどよく加味されているためか、話がすっと入ってくる上に結構楽しめるんですよ。

 CMではいかにもパニック系のSFみたいな見せ方していますが、科学的な部分はいまでは実世界でもお馴染みなテクノロジーだったりするため難度も低く、WALL-Eみたいにうーんと考え込むような裏っぽいところもない。

 そもそも勧善懲悪ものなど結末が分かりきっていても観客が観に来るわけは、そこに至るまでのプロセスを楽しんでいるわけです。
 同じスタンスでこの『サロゲート』は、冒頭のやたら小ぎれいなブルース・ウィリス演じるトム・グリーア捜査官がいかに本当の自分を取り戻し、さらにはあらためて自分の過去と向き合ってゆくのかを作品を通じて一緒に追っ掛けていく作品なんです。

 モチーフは近未来SFですが、じつは倦怠期夫婦の再生もの映画なんですね。

 そのせいか、けっこう緻密に未来を描いているのにもかかわらず、登場するアイテムはあまりにも今私たちの身近にあるものと大差なくて、ビジュアル的にはちっとも未来らしくないし、事件の展開上、どうしても必要で登場してくるアイテム群もむしろよほど新『007』シリーズのほうが気が利いているほど。

 しかし注目すべきはブルース・ウィリスのいつになく抑え気味な演技。

 彼がこうした性格を前に押し出した演技をしたのを私が観たのは『シックス・センス』以来。もちろん『アンブレイカブル』とかそれっぽい作品なども出てはいるんですが、どうもそうしたお堅い系路線でなければ真逆な『ダイ・ハード』系のアクションものばかりの気がしてなりません。
『16ブロック』もアウトロー警官が巻き込まれて、足手まといひきつれて死にそうな目に遭って…と基本的に同じでしたからね。

 昔はメリル・ストリープやゴールディ・ホーンと共演した『永遠に美しく』なんて気の利いたブラックコメディにもチャレンジしていたし、まさかの『フィフス・エレメンツ』なんてバーバレラ並みにぶっとんだSFもこなしてましたから、いくら老けたとはいえ、もっと可能性にチャレンジしてもらいたいもんだと思ってたんですよ。

 そういう意味では今回、小ぎれいで若々しいクールなブルース、はたまたターミネーターばりの超人的アクション、そしてその真逆の人間くさくてズタボロオヤジのブルースと、たった90分に様々な表情を見せてくれます。

 大感動するとか謎にうめくとか心に残るといった作品ではありませんが、なぜか昔のSFTVシリーズを観ているような安心感のある楽しさがあったのは事実です。
『アバター』や『カールじいさん』などの3Dや、アカデミー狙いの大作がひしめいているだけに、たぶんアッという間に劇場から消えるような気がします。

 でもご安心を。この作品なら自宅のアナログテレビでも充分楽しめますからね。
 
 では、また、お逢いしましょうね。

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 最後まで読んでくださってありがとうございます。ちなみに私───
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コメント

こんにちは!
私は、もう少しサロゲートの良しあしを考えたいところだったけれど、おっしゃるとおり、小難しいテーマを無理やり押し込めることなく、長くない尺でさっくりまとめ、それでいてトムの人間らしいワガママをラストに盛り込んだり、アクションの見せ場もしっかり取り入れてあるところが気に入ってたりします。

エンタメとして手軽に楽しめる映画でしたね。

たいむさん、トラ&コメありがとうございました!
いや、たいむさんも“嫌いじゃない”っておっしゃるとは嬉しい限り。やはりこの作品の“あっさり感”がかえって良かったんでしょうね。
そういう意味ではあのCMは大げさすぎるんですが、興行屋としてはあれしか仕方なかったかなあ…と思います。
超話題作だらけで、出す時期が悪かったもの。幸い私はCMを観ないで鑑賞したので、あとからアレ観て「わちゃー。こらチャウでしょ、こらイカンわ」でしたけど。
逆にネタ的に可能性を多く秘めたこの作品にインスパイアされて、将来傑作が生まれそうな気もします。

『サロゲート』、地元の映画館スケジュールを確認したら、来週くらいまでは何とか・・
けど、確かに公開時期めちゃくちゃマズったですよねぇ。作品の質はともかく、微妙に地味ですもん。
かくいう私だってスルーする気満々でしたし。

とりあえず今週末は『ラブリー・ボーン』を予定しているので、もしハシゴできたら・・
多分、WOWOW待ちになると思いますが。(^^;

ブログリンク、新・オスCINEさんの方で貼り替えしておきますね。
今後ともどうぞよろしゅうに~♪

小夏さん、毎度です!
いや、こういっちゃ失礼ですが、レンタルやテレビで充分ですよ。
それなりに面白いには違いないと思いますが、ハシゴしたら忘れられてしまいそうな映画ですし。
リンク変更、ありがとうございます!こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。

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